鳴子温泉散歩

 鳴子温泉郷というのは、東から川渡温泉東鳴子温泉鳴子温泉、山中平温泉、鬼首

温泉と大きく5つの地域の温泉を指します。旧温泉分類の11種類のうち8種類の温泉

が湧き出ているのだそうです。

 その中心にあたるのが、鳴子温泉駅界隈の鳴子温泉と言われる地域です。

 ホテルや旅館の数もたぶん一番多いだろうと思います。

 浴衣を着て下駄を履いてカランコロンというわけにはいきませんでしたが、街を散策

してみました。

 鳴子温泉駅前には、歩道と車道を分ける車止めにこけしが立っています。 

次は、マンホールのふたです。

 駅からちょっと上った所にある温泉神社です。

 ここにもこけしさんが立っていますが、長い間雨風にさらされたのか、絵の具の色が

あせ、木も割れ目が入っていてかわいそうな気がしました。837年に建てられた神社

とのこと。何代目かはわかりませんが、代々ずっとここでおまいりに来ている人を見守

ってくれたこけしなんでしょう。

 駅を出たところにある「ぽっぽの足湯」です。私も歩いて疲れた足をつけて一休みしました。

 

 翌日、まだ日が高いうちにもう一度やって来ました。

 郵便局へはがきと切手を買いに行き、このポストを見つけました。都会では四角いポ

ストしか見かけませんが、田舎を旅するとこの円柱形のポストに出会えます。ここのは

特別ですね。

 郵便局と道を隔てて「たかはし亭」という食事処がありました。こけしののれんに誘

われて遅めのお昼を食べることにしたのです。

 中は、古民家といった風情で座敷にテーブルが設えてあり、縁側の向こうに庭園も見

える素敵なところでした。店の方にお話を聞くと、元々は、開業医が住んでいらしたう

ちなんだと聞きました。ここは、東日本大震災の際、瓦が落ちただけで建物はしっかり

していたので、ここで食堂を開くことにしたのだそうです。年配の女性が働いてらして

落ち着いたいい雰囲気のお店でした。

 

 私が頼んだのは、温卵のせのカレーライスです。スパイスが香ってくるよく煮込ん

だカレーでした。漬物と一緒に豆腐の糠漬けなどが出てくるところがいいですね。

 このお店で、立ち寄り湯の情報をもらいました。「滝の湯」と「早稲田座敷湯」と2

軒あるうちどちらが温いお湯か聞いたところ、早稲田桟敷湯の方が温めだと教えてもら

い、食事をした人には、50円引きのチケットがもらえることも分かりました。

 何で早稲田なのかというと、早稲田の学生がボーリングの実習で掘り当てた温泉なの

だそうです。

 この建物も温泉とは思えないので、どこから入るのだろうと恐る恐る路地を進むと

左側に下りる階段があって、地下にあたるところにフロントがありました。ずいぶん歴

史が古いのか、お風呂の中の壁も傷んでいるところがあって、決してきれいなお風呂屋

さんではありませんでした。でも、広いお風呂にたった一人、こういうのを贅沢な時

間というのでしょう。ぬるめのお湯なのでゆっくりと温まりました。因みにこの建物も

学生さんのデザインした建築物なんだそうです。

 この温泉は550円、もう一つの「滝の湯」は、200円。湯が熱めでもよければ、木造で

温泉場の風情があってよさそうです。

 今日は、ここまで。

 

紅葉が見頃ー鳴子温泉

 翌日6日朝、宿舎の交流館から20分ばかり歩いて獅子が鼻までマガンの飛び立ちを

見に行きました。月曜日だというのに結構な数のカメラマンが三脚を立てて用意をして

いました。

 6時20分ころ、曇っているものの東の空が赤く染まってきたので、そろそろかなと

思っていると、沼の奥の方の群れが一斉に飛び立ちました。手前のマガンたちは、羽を

ばたつかせているものの飛び立ちません。

 

 この日は、第2陣、第3陣とおよそ3回の飛び立ちになりました。よく晴れた日の出

だと1回で飛んでいくので、その迫力はすごいものになります。

 

 今年は伊豆沼の水がずいぶん少なくて驚きました。今まで何回も行っていますが、こ

んなに水位が低くなっている沼を見るのは初めてです。夏の蓮の花もずいぶん少なかっ

たようですし、異常気象のせいかもしれません。

 

 せっかくここまで来たのにそのまま帰るのはちょっともったいなくて、鳴子温泉に浸

かって帰る計画を立てました。くりはら高原駅から、新幹線で一駅戻り、古川駅から陸

羽東線というローカル線に乗って、鳴子温泉の一番奥の中山平駅まで行ってみました。

 

 まず、古川駅で海外から来た方たちが大勢いるのに驚きました。欧米から来た人もい

ましたが、ほとんどは、中国か台湾か区別ができませんが、中国語が飛び交っていまし

た。

 

 鳴子温泉駅から次の中山平駅に行く途中、鳴子温泉の紅葉時期のポスターに使われる

鳴子峡谷に来ると電車はスピードを落としてサービスしてくれます。電車の窓は汚れて

いるのできれいな写真は撮れませんが、一斉に人が張り付きます。画面の上にある橋の

上にもたくさんの人が張り付いているのが見えました。すぐに次のトンネルに入り、し

ばらくすると中山平駅です。

 

 駅から峠道を30分弱上ると電車から見た橋の上に到着です。

 峡谷の断崖と赤、オレンジ、黄色に色づいた木々の葉が織りなす風景がここは格別に

美しいのだと思います。

 橋の手前に駐車場とレストハウスがあります。展望台から下を覗くとさっき通った線

路とトンネルが見えました。誰が配置を決めたわけでもないのに、見事な紅葉です。

 電車から見えた大深沢橋です。この街道は、まっすぐに行くと、山形県新庄市へ抜

ける国道47号線です。

 

 この車道をしばらく行くと車専用のトンネルに入ってしまうので、脇道を上り下りし

ていくと「日本こけし館」に出てきました。

 温泉町には昔からお土産のこけしを作る職人さんがいるようですが、鳴子は、その中

でも有名で私もここのこけしを一体持っています。このこけし館には、古い時代からの

こけしや、鳴子だけでなくほかの温泉地で作られているものや、コレクションした方の

寄贈のものなどずいぶんたくさん収蔵されていました。

 鳴子のこけしの特徴は、首が回りキュッキュッと音がするところです。シンプルな形

と造りですが、顔の描き方も個性があり、丁寧に見ていくと興味が尽きません。

 今の人は素朴な木の人形にどれくらい興味を持つだろうかと思うと、何となく寂しさ

も感じました。

 館の人が鳴子温泉駅への帰り道を丁寧に教えて下さったので、景色も楽しみながら下

り道を40分くらい歩きました。

 駅の通りで見つけた鳴子名物「栗団子」。大きめのみたらし団子です。中に栗が

一粒入っているので大きいのです。

(今日はここまで、続きはまた。)


 

いも煮会(伊豆沼収穫祭)へ参加

 

 先週の日曜日、伊豆沼サンクチュアリセンター友の会のいも煮会へ参加してきまし

た。私が友の会へ入ったのは2016年。渡り鳥のことを調べているうちに、かつて

秋になると日本全国にマガンが渡って来ていたのに、開発が進み様々な理由でマガンを

見かけることが少なくなったようです。

 

 それでもこの宮城県北部の伊豆沼辺りには、わずかに渡りが続いていたことがきっか

けでマガンを増やしていこうという機運が高まり、現在のように日本へ渡ってくるマガ

ンの8割から9割がここで越冬するようになりました。

 

 この辺りは、田んぼが多く米や大豆を収穫した後の落穂が豊富であるために、エサに

困らないこと、沼があることで肉食の動物から襲われずに眠ることができること、沼が

凍らないこと(凍る年もある)など、マガンにとって好条件の越冬地なのです。

 

 今年も9月にマガンの第一陣、10月に白鳥の第一陣がすでに到着していますが、

11月9日のサンクチュアリからの報告では、マガンが10万羽をはじめ、白鳥が約1

300羽、北の国から渡ってきています。

 

 初めてここへやってきたときに、夕方三々五々竿になりカギになり隊列を組んでねぐ

らへ返ってくるマガンたちの様子や、明け方日の出とともに周りの田圃へと一斉に飛

び立っていく雄大な景色に圧倒されて、マガンたちの営みがこれからもずっと続くこと

を願う気持ちで、友の会へ入ったのです。

 

 入ったのはいいのですが、友の会の春の会合や秋の行事にはなかなか参加できなかっ

たのです。一度は顔を出さなければいけないと思っていたので、そのうちにと思ってい

たら行こうと思っても行けなくなるかもしれないと思い、今年参加することにしたので

す。

 サンクチュアリセンターの隣にある若柳ラムサール公園に着くと、もうセンターの職

員さんたちがすでに大鍋で里芋や野菜、きのこ、それに肉などを用意して煮始めていま

した。

 

 仙台市や隣の古川市など近隣の地区からお子さんを連れた家族連れの方などがいらし

ていて作業が進んでいました。遅く着いた私もエプロンを付けてさっそくたくわんを切

り、その後沼で獲れた「ヌマエビ」と人参と玉ねぎを入れたかき揚げづくりを手伝いま

した。

 昔は、沼で獲れる魚などはこの地域のたんぱく源でもあり、ヌマエビを獲る漁師さん

がそれを生業にしていたのだとあとから聞いて知りました。5㎝くらいしかない小さな

エビなのでそれだけでは量がないので、かき揚げがちょうどいいようです。

 

 これは、雷魚の唐揚げ。白身で臭みもないので美味しく食べられます。雷魚も外来魚

ですが、ブラックバスブルーギルほど繁殖力が強くないので、駆除されずにいます。

 ナマズのから揚げです。細かい骨があるので、雷魚のように無防備で口に入れること

ができませんが、これも淡泊で美味しくいただけます。

  友の会の近くの方が育てたサツマイモを焼きいもにしてくださったものです。

  色が黄色いのは、シルクスイート、黄色いのは紅あずま系の芋だそうです。

 

 準備が一通り終わった後、友の会の会長さんのご挨拶などがあり、この地区の農家さ

んたち(主に男性)、以前この地区に住んでいて今は同じ市内の山の方からみえた方、

それに家族連れの方々などと話をしながらごちそうを食べ親睦を深めました。

 

 私はいも煮をお椀に2杯、焼き芋を1本、それにヌマエビのかき揚げ、雷魚ナマズ

唐揚げと一通りいただき、持って行ったおにぎりを食べる前にお腹は満腹でした。

 初めての収穫祭でしたが、皆さん和気あいあい。沼の収穫物も食べることができて

伊豆沼への親近感が一層わきました。

 この日は、曇っていましたが、日の入りの時間に近づくと三々五々それぞれねぐらへ

帰ってきました。昨年は、来ていなかったので久しぶりにがんの鳴く声を聴き、ほっと

安堵しました。

鯨のレストラン

 この映画は、2015年に公開された「ビハインド・ザ・コーヴ」の次作の映画であ

る。「ビハインド・ザ・コーヴ」は、「ザ・コーヴ」というアメリカの映画に疑問を抱

いた八木景子監督の反証にあたる映画だ。

 「ザ・コーヴ」は、2009年に公開された。和歌山県太知町のイルカの追い込み漁

を問題視したアメリカのドキュメンタリー映画で、日本は、それ以来残酷なことをして

いるというレッテルが張られてきた。

 

 2014年日本政府は、オーストラリアなど反捕鯨団体から国際裁判所に提訴され、

捕鯨のプログラムを見直すように裁定された。このことをきっかけに日本の捕鯨につい

てもっと深く知りたいと思い、「ビハインド・ザ・コーヴ」が制作された。

 配給会社も付かず、長くこの映画が世界で見られなかったのが、2017年から大手

のネット配信が始まり、ようやく公平な立場でこの二つの映画が見られるようになった

そうである。

 

 今回の「鯨のレストラン」は、「食」としてのクジラと「科学」としてのクジラを織

り交ぜながら提起してくれる映画だ。

 科学者が難しい話もするが、他方環境問題とは無縁のクジラ専門料理店の大将

も出て、いろんなクジラの料理を見せてくれる。

 

 八木景子監督は、前作の時は映画を撮るのも初めて、スポンサーがいないのですべて

自腹を切って公開まで持っていったそうで、本当にクジラの文化を知らせたい、捕鯨

闇に挑戦したかったのだろうという熱意を感じた。

 

 

 私は、小学生の頃給食でさんざんクジラの肉を食べた年代なので親しみがある。

 しばらく食べていなかったので、展覧会を見に行くついでにさっそく訪ねた。

 

 

 左は、クジラのステーキ。柔らかく臭みもなく美味しい赤身だ。残った肉汁もご飯にかけて食べる。

 右は、クジラの尾の身。マグロの中トロに近い脂も感じる柔らかい身だ。

 この週には、もう一度神田へ出かけた。その時食べたのが、刺身の五点盛りだ(一部

食べてしまった)。

 

 左から赤身、ベーコン、胃袋、皮つきの脂身、尾の身。

 ベーコンは、自家製で結構手間暇かけて作られる。胃袋は薄くて柔らかい。皮つきの脂身は、ガムを噛んでいるようで固いが噛んでいるうちに味が染みてくる。赤身も美味しいが、やはり尾の身は柔らかく脂の旨味を感じる。

 

 ランチのステーキとか、竜田揚げ、ユッケ丼、刺身の三点盛りは、1000円で食べられるが、尾の身だけの刺身は、1800円、五点盛りは1500円。もっと高いかと思ったら、割合庶民的な値段なので、若い男性が次々訪れるのでびっくりした。

信州の旅4 松本市街

 松本市街は、学生の頃黒部へ行く途中の扇沢へ氷河の痕跡を残した石を探しに行くた

めに来た時と、あと一度は50代に入ってから友人と犀川にやってくる白鳥を見に来た時

に寄ったことがあるだけです。

 松本で覚えているのは、松本城だけ。ちゃんと松本の街を歩いたことはありません。

 

 三人とも松本へは来たことがあるにもかかわらず、じっくりと街を歩いたことがなか

ったという偶然もあって、今回は街中のビジネスホテルに一泊することにしたのです。

 

 都会へ泊るにはビジネスが安上がりなので、今回も駅から7分くらい歩いたところに

あるビジネスに泊りました。始終泊っている私は慣れていますが、シングルへ泊るのは

初めてだという人もいたので、鍵のことだとか、照明のこととか、お風呂の使い方だと

か、一応レクチャーしました。先輩面して偉そうにしてましたが、今回フロントでのチ

ェックインは、自分で入力し、支払いもこの時に済ませるシステムになっていたのには

驚きました。年々様子が変わっていくので、対応しなくてはならない年寄は大変です。

 

 翌朝は、駅まで出てコインロッカーに荷物を預け、この市内バスに乗りました。この

おしゃれな水玉模様は、草間彌生氏の作品からとったラッピングバスだと思われます。

名前もおしゃれで「タウンスニーカー」といいます。いかにも運動靴を履いてバスでお

散歩という感じがこの小さめのバスによく似合っているなと思いました。とり

あえず駅から東の方にある「あがたの森公園」まで乗ってみました。

 

 

 公園には大きなヒマラヤスギに囲まれた美しい洋館が建っています。この洋館は、旧

制松本高校の校舎だったそうです。現在は、あがたの森文化会館として会議室や図書館

やホールなどに使われています。旧制高校を松本が誘致する際には九番目の高校(その

時は、八校まであった)を目指していたそうですが実らずに地名が付いた高校になった

そうです。旧制高校の建物が残っているのは松本だけらしく、重要文化財に指定されて

いる優美な洋館です。

 中庭には、「岳人」と名付けられた登山スタイルの彫刻が立っていました。肩に乗っ

ているのはライチョウだと思いたいですが、肩乗りライチョウなんていませんね。です

が、いかにも松本にふさわしい彫刻だと思いました。

 (レンズが汚れていて)ボーッとしたところにイチョウの木がありました。銀杏が実

っているのを見つけたときに昼間は気温30度の松本にも秋が忍び寄ってきているのを

感じました。

 日差しが強くて少々疲れたので、池のそばの四阿で一休みしました。天気が良かった

ので同じ色の帽子をかぶった保育園の幼い子どもたちがたくさん遊びに来ていました。

 

 

 松本深志神社にもお参りをと思っていましたが、いつの間にかお昼近くになっていた

のでそのまま歩いて松本美術館の方に戻って行きました。

 前庭には草間彌生さんの独特なオブジェが飾ってありました。私たち3人は、草間彌

生さんはすごいアーティストだとは思っていますが、あまり好みではなかったために日

陰で休ませてもらっただけで中には入りませんでした。

 美術館では「映画監督山崎貴の世界」と題した特別展示がされていました。入ってい

ないので知る由もありませんが、ポスターに出ていたので、この写真に写っているのが

そのオブジェなんだなと思いました。あとでお城へ向かう橋の歩道に飾られていまし

た。

 お昼に食べたドライカレーです。

 1日目に松本電鉄の電車の発車時刻まで待ち時間があったので、街中の公園のあたり

をぶらついていました。その公園のことに付いてアンケートを取っている人がいたの

で、その人に「観光客でもいいなら答えますよ。」と言ったら3人とも答えることにな

ったのです。その方とちょっとした関係ができたので、ついでに昼ご飯の情報をもらっ

たのです。

 

 その時にその方のお知り合いがやっている 食蔵「BASALLA」というところを紹介し

てもらいました。

 せっかくなのでこの日その店でランチをすることにしました。入口のガラスの部屋

は緑の植物が植えられていて、建物は蔵をリノベーションしただけあって天井が高

くゆったりした雰囲気のレストランでした。地元のお野菜をふんだんに使ったサラダと

牛肉入りのスパイシーなドライカレーで美味しくいただけましたが、私ども年寄には量

が少々多すぎました。

 食後最後は、松本城にやってきました。旅も4日目に入ると疲れが出て来て、お城の

中へ入って急な階段を上り下りする気力がなくなってきていました。ベンチで一休みし

て駅への道を辿りました。外人の観光客もずいぶんと来ていました。

 駅へ向かう途中で、開運堂という老舗の和菓子屋さんへ寄ってお土産を買いました。

 私のお目当ては、このロボットが作るソフトクリームです。カウンターでソフト用の

メダルを買って、投入口へ入れるとソフトクリームロボットが動き出します。一日一種

類のみでこの日は黒ゴマソフトでした。カレンダーに予告されているメニューを見る

と、2,30種類あるかと思います。ジェラート系の舌触りのソフトでした。

 

 松本市は古いものが息づく素敵な街でした。大型店が撤退したり、郊外にショッピン

グモールができたり、松本もほかの地方都市と同じように寂しさが否めませんが、何と

か活路を見出してほしいなと思います。

 長い旅行ブログにお付き合いくださり、ありがとうございました。

信州の旅3 乗鞍畳平

 旅の3日目、本当は朝すぐに松本へ戻る予定でいたのですが、

「せっかく乗鞍山の真下まできているのだから乗鞍へ乗り込もうよ。また来たいと思っ

ても願いが叶わないかもしれないよ。若くはないんだから。」

と、その日の朝 私が言い出して乗鞍畳平まで行くことになりました。

 

 休暇村のバス停から約50分、長野県側からの道はエコーラインと呼ばれ畳平まで

一気に登ります。雨は降っていませんでしたが、途中からは細かい霧が窓ガラスを濡ら

していました。

 白い幹がシラカバからダケカンバに変わり、やがて森林限界に入り、ハイマツの緑の

じゅうたん、ところどころに赤い実をつけ黄葉したナナカマド。今年初めての紅葉を見

ました。

 畳平の標高は、2706㎡。車の駐車場があるところとしては日本で一番高いところ

だそうです。

 駐車場に降り立つと寒いこと、寒いこと。霧雨と風で寒くてすぐに待合室に入り、暖

を取りました。想像はしていましたが、気温は8℃。一気に10度以上下がりました。

 

 霧で何も見えないので、手探りで目の前の小高い山を目指しましたが、風が強くて途

中で挫折。このボーッとした山は、魔王岳だそうです。乗鞍山は、たくさんの山の総称

だそうで、この魔王岳も乗鞍山の一つです。因みに一番高い山は剣が峰という名前で呼

ばれています。

 

 魔王岳に登る階段の隙間にけなげに咲いていた花は、イワギキョウ。こんな瓦礫の中

によく根付いているなとその強さに感激しました。

 風が吹きさらすところは避けて駐車場から下に下り畳平の木道の上をしばし歩きまし

た。ここは広い湿原のようですが、その日は全体像が霧で何も見えません。

 草紅葉の湿原で花はもうないだろうと思いながら歩きましたが、ここにもけなげな

花が咲いていました。

 シナノキンバイかと思いましたが、ミヤマキンバイのようです。夏の花ですからこれ

が最後の花だと思います。

 コケモモです。この赤い実は今が旬でしょうか。

 この白いのはハナゴケかな?よくわかりません。

 

 いつまでも霧が晴れないので、1時間後に出るバスに乗って帰ることにしました。

 天気が悪くて歩けなかったのは残念でしたが、今年初めての本格的な紅葉を見、

今年初めての冬の寒さも体感することができてここまで来た甲斐があったなと思いまし

た。

 (つづく)

信州の旅2 上高地

 翌日は、休暇村前のバス停から9時22分のバスに乗り上高地へ向かいました。ちょ

っと雲が多めでしたが、晴れていました。バスは、昨日と同じように沢渡(さわんど)

を経由して上高地バスターミナルへ向かいます。上高地へは直接車の乗り入れが出来ま

せん。車で来た人は、沢渡のモータープールに車を駐車してからバスに乗るので必ず停

まってお客さんを乗せるようにしています。

 上高地バスターミナルで下りてからまずしなくてはならないのは、帰りのバスの予約

です。バス会社の方でお客さんの数を把握してスムースにバスを運行するためでしょう

が、海外からのお客さんたちがそんなシステムになっていることが分かるのかちょっと

心配しましたが、若い方がスマホを片手に手繰っている様子を見ると、心配なのはスマ

ホをうまく操れない私のような老人なのだとわが身を振り返りました。

 

 途中でお腹がすくだろうと思って、おやきを一つ買って歩き始めました。

 少し歩くと河童橋にたどり着きます。まだ紅葉には間がある9月のウイークデーでも

これだけの人ですから、前日の日曜日は、すごく込んでいたことが予想されます。

 

 河童橋の右岸と左岸のどちらの道を辿って上流にある明神池まで行くか考えました

が、山道の雰囲気が感じられる左岸の道を歩くことに決め、河童橋を右から左へ渡

りました。

 穂高を目の前に見たのは私は初めてです。若い時に井上靖の「氷壁」という小説を読

み、一度は穂高を見たいと思っていながら、山が好きな友人との付き合いもなく今に至

りました。あとの二人は、一度は上高地へ来たことがあるので今回の旅では私の希望が

入れられたということです。

 

 山好きな人が子どもに穂高とか、穂高の「穂」を名前の一字に入れたりすると聞きま

すが、わかるような気がします。穂高奥穂高岳)を目の前に見ると、ヨーロッパアル

プスのように削られた岩がそそり立つその壮大さに打たれます。何せ北アルプスでは1

番高く、日本国内でも富士山、北岳南アルプス)に次いで3番目に高い山なんですよ

ね。

 歩いているうちに陽光が雲間から差し込んできました。振り返ると焼岳が見えます。

 焼岳は、今も活動している活火山です。大正年代の噴火によって梓川がせき止められ

できたのが大正池だそうです。

 以前は、もっと池の中に立木があったし、水も多かった記憶があると友人たちは言っ

ていましたが、土砂が入り込んで年々池が狭くなってきているので、シーズンオフに浚

渫をして池としての佇まいをリセットしているようです。

 ここは、川に立つ立木も結構あって、雰囲気がある場所なのでベンチが一つ置いてあ

りました。

  

 紅や黄で彩られた葉っぱを見るとちょっぴり秋の始まりを感じます。

 河童橋から約3㎞、1時間ほどで明神池に到着です。でも帰りのバスの時間にゆとり

がなかったので、池の中にある穂高神社の奥宮のお参りは失礼させてもらいました。

 この明神池は、背後にそびえる明神岳が噴火してできた池だそうです。

 

 往きは左岸コースを歩いてきたので、帰りは右岸コースを辿ることにしました。この

日は、左岸コースもそれなりに歩く人がいたのでくま鈴を持ってはいたものの鳴らさな

いで歩いていたのですが、うちに帰ってニュースを聞いて驚きました。この左岸コー

スで27日にクマに襲われた人がいたというのです。

 25日は、天気は曇り時々晴れという状態でしたが、27日は山は雨が降っていたよ

うで、歩く人はずっと少なかっただろうと思われます。観光客でにぎわう上高地にク

マが出るとは怖いなと思いました。

 今年は、山はブナの実が大凶作でクマも困っての出没のようです。

 右岸から明神岳が青空をバックに見えました。明神岳も2960m、神様の宿る堂々

たる山です。

(つづく)