信州の旅2 上高地

 翌日は、休暇村前のバス停から9時22分のバスに乗り上高地へ向かいました。ちょ

っと雲が多めでしたが、晴れていました。バスは、昨日と同じように沢渡(さわんど)

を経由して上高地バスターミナルへ向かいます。上高地へは直接車の乗り入れが出来ま

せん。車で来た人は、沢渡のモータープールに車を駐車してからバスに乗るので必ず停

まってお客さんを乗せるようにしています。

 上高地バスターミナルで下りてからまずしなくてはならないのは、帰りのバスの予約

です。バス会社の方でお客さんの数を把握してスムースにバスを運行するためでしょう

が、海外からのお客さんたちがそんなシステムになっていることが分かるのかちょっと

心配しましたが、若い方がスマホを片手に手繰っている様子を見ると、心配なのはスマ

ホをうまく操れない私のような老人なのだとわが身を振り返りました。

 

 途中でお腹がすくだろうと思って、おやきを一つ買って歩き始めました。

 少し歩くと河童橋にたどり着きます。まだ紅葉には間がある9月のウイークデーでも

これだけの人ですから、前日の日曜日は、すごく込んでいたことが予想されます。

 

 河童橋の右岸と左岸のどちらの道を辿って上流にある明神池まで行くか考えました

が、山道の雰囲気が感じられる左岸の道を歩くことに決め、河童橋を右から左へ渡

りました。

 穂高を目の前に見たのは私は初めてです。若い時に井上靖の「氷壁」という小説を読

み、一度は穂高を見たいと思っていながら、山が好きな友人との付き合いもなく今に至

りました。あとの二人は、一度は上高地へ来たことがあるので今回の旅では私の希望が

入れられたということです。

 

 山好きな人が子どもに穂高とか、穂高の「穂」を名前の一字に入れたりすると聞きま

すが、わかるような気がします。穂高奥穂高岳)を目の前に見ると、ヨーロッパアル

プスのように削られた岩がそそり立つその壮大さに打たれます。何せ北アルプスでは1

番高く、日本国内でも富士山、北岳南アルプス)に次いで3番目に高い山なんですよ

ね。

 歩いているうちに陽光が雲間から差し込んできました。振り返ると焼岳が見えます。

 焼岳は、今も活動している活火山です。大正年代の噴火によって梓川がせき止められ

できたのが大正池だそうです。

 以前は、もっと池の中に立木があったし、水も多かった記憶があると友人たちは言っ

ていましたが、土砂が入り込んで年々池が狭くなってきているので、シーズンオフに浚

渫をして池としての佇まいをリセットしているようです。

 ここは、川に立つ立木も結構あって、雰囲気がある場所なのでベンチが一つ置いてあ

りました。

  

 紅や黄で彩られた葉っぱを見るとちょっぴり秋の始まりを感じます。

 河童橋から約3㎞、1時間ほどで明神池に到着です。でも帰りのバスの時間にゆとり

がなかったので、池の中にある穂高神社の奥宮のお参りは失礼させてもらいました。

 この明神池は、背後にそびえる明神岳が噴火してできた池だそうです。

 

 往きは左岸コースを歩いてきたので、帰りは右岸コースを辿ることにしました。この

日は、左岸コースもそれなりに歩く人がいたのでくま鈴を持ってはいたものの鳴らさな

いで歩いていたのですが、うちに帰ってニュースを聞いて驚きました。この左岸コー

スで27日にクマに襲われた人がいたというのです。

 25日は、天気は曇り時々晴れという状態でしたが、27日は山は雨が降っていたよ

うで、歩く人はずっと少なかっただろうと思われます。観光客でにぎわう上高地にク

マが出るとは怖いなと思いました。

 今年は、山はブナの実が大凶作でクマも困っての出没のようです。

 右岸から明神岳が青空をバックに見えました。明神岳も2960m、神様の宿る堂々

たる山です。

(つづく)