昨年の6月、風林亭にお昼を食べに行ってから
早いもので、もう1年が経ちました。
その時、
「今頃は、夜はホタルが飛ぶんですよ。」
という話を聞いていたので
今年は、夜行ってみました。
八王子の友だちの家から、上野原市八つ沢にある風林亭まで
旧甲州街道を走ること約50分。
夏至までもう10日に迫っているので
夕方といえども 辺りはまだまだ明るいです。
風林亭の北側には小さい小川、
南側には、野菜や果樹が植わっている畑、
それより一段下には、上流から引いた水路に沿った水田、
そしてさらに下を八つ沢の川の本流が流れています。
まわりの山からは、いろんな鳥の声に交じって
ガビチョウの一段と大きな声まで聞こえてきました。
水田のあぜ道を進んでいくと、カエルの声も聞こえてきます。、
山の緑を映した田の水面、アメンボやミズスマシの姿に、
懐かしい田舎の原風景が浮かび上がってきました。
どの辺に蛍が飛ぶのでしょうか。
約束の五時半になりました。
期待を膨らませながら、店の前にやってきました。
白い布に「風林亭」と書かれた暖簾が揺れています。
まずは食事です。
前菜: (左から)黄身寿司、花巻(イチジクジャム、桑の実のせ)、
わらびのあえ物、卯の花寿司
まわりの山で収穫した名残のわらびのたたきは、
とろっとしたやわらかい春の味です。
花巻は、中華の蒸しパンのようなものです。
うどんの生地を使って作ったもので
発酵パンですのでとても味わいが深いです。
ジャムも桑の実も自家製。
椀物:水餃子のスープ仕立て
水餃子の皮もうどんの生地を使って作ったもので、
中は、自家製のニラが入っています。
上にのっているのは、山三つ葉、
餃子の下には、干しエビが入っています。
昆布、かつお節、鶏ガラスープ、エビの出汁を合わせて出したスープを
口に入れると、すごく幸せな気持ちが広がり
「美味しい。」、
ため息交じりの言葉が自然と口をついて出てきます。
新玉ねぎとスモークサーモンのサラダ
これも、前の畑に植わっている新玉ねぎのスライスに
自前の燻製小屋で作ったスモークサーモンのスライスを
のせたドレッシングサラダです。
シャキシャキとした新玉と しっとりとしたサーモンが
口の中で魅力的な音楽を奏でます。
バジルの淡い緑が鮮やかです。
香味野菜の天ぷら黒酢あんかけ
これも、山三つ葉、畑の間引きニンジン、
もう一つの野菜(何だったか忘れました。)のかき揚げに
黒酢あんがかかったものです。
間引いたニンジンのオレンジ色が入って、色を添えてます。
ワラサの漬けと、モロヘイヤのたたきのポン酢仕立て
モロヘイヤは、昨夏の収穫物を冷凍したものだそうで、
冷凍にしても十分美味しいのだそうです。
美味しくなあれ と心で唱えながら
しゃもじや箸を使って混ぜるとこんなふうになるんだと
話してくれました。
料理は、心で念じながら作るものだと教えてもらった気がします。
上にのっている黄色い粉は、自家製陳皮です。
たけのことオクラの蒸し煮
今、八つ沢辺りでは、真竹や淡竹のタケノコが旬だそうです。
そのタケノコと昨年の冷凍オクラを出し汁につけながら
蒸して作った煮物だそうです。
普通の煮物は、色が茶色になりますが、
こうして作ると、素材の色がきれいに残ります。
サラダうどん
ご飯の代わりです。
いつものように家付き酵母で発酵したうどんの生地を
目の前で打って、手延べうどんを作ってくれます。
それに、畑から採ってきたルッコラなどの葉野菜、
加賀太(きゅうり)のピクルス、梅の砂糖漬け、乾燥紫芋
鶏や豚肉を使った燻製ハムやソーセージ、
スモークサーモンやチーズなどを散らして、
黒酢のドレッシングで和えたものです。
とろったした魚や肉のスモーク風味、梅や芋の甘味、ピクルスの酸味など
いろんな味のハーモニーは、食べていてとても楽しくなります。
ここまで食べるともうお腹は、満腹を通り過ぎています。
けれど、デザートは、別腹です。
しっかりといただきました。
わらびもちとフルーツのデザート
黄な粉をまぶしたわらび餅、昨年取れたキウイやイチジクのシロップ漬け、
どれも、自家製のものを組み合わせたデザートです。
ここの料理は、季節の自然が大きなテーマですが、
それに自家製、それも有機栽培で取れた畑のものを冷凍したり、
魚や肉は、煮たり、焼いたり、あるいは燻製などにして
長期保存できるようにしたものが
上手にアレンジされて出てくるのが特徴です。
だから、よそではなかなかこの値段では出てこないようなものが
自家製ということで安く食べられて 本当に満足します。
それに、野菜の育て方や、料理の工夫などを質問すると
教えてくれるのもありがたいです。
今回も、ご主人に料理(シュウマイと餃子作り)のことで
聞いてみたいことがあったので、
ご馳走をいただきながら、丁寧に教えてもらいました。
時計は、もう間もなく八時になろうとしていました。
あたりは、すっかり暗闇。
窓からスーッと涼しい風が入ってきます。
「ホタルが今日はいいと思いますよ。」
という言葉に背中を押され、外へ出ました。
はじめは、うちの灯りで目が慣れてなくて
「あそこに飛んでいますよ。」
といわれても、なかなか見つけられなかったのですが、
灯りが届かないところに目をやると
いました、いました。
一度に八個くらいの点滅が始まっていました。
本流の川に沿って歩いていくと、
次から次へとホタルの白い光の点滅が見えてきます。
北側の小さな小川にもぽつぽつ出てきています。
私たちが歩いている道を横断するのも現れ、
うちわでも持っていれば、そこに止まりそうです。
この日は、川筋で50匹くらいのホタルに出逢った気がします。
30分ほど、ホタルに目を凝らしていましたが、
八時に見えた数より、だんだん数が少なくなってきました。
めでたく愛のシグナルでペアーが見つかっていればいいのですが。
ここは、観光地と違って 自然にカワニナが繁殖し、
それを餌とするホタルが自然な形で生まれているということが
何とも貴重です。
もう一組歩いている人がいましたが、
ほかには、見物をしている人はいませんでした。
ホタルの光がたまにカメラの中に入ると緑色のラインを残しますが、
あまりに暗くて撮ることは叶いませんでした。
おまけ
代わりに、西の空に目を向けると金星と木星が明るく輝いているのが見えたので
撮ってみました。
真ん中のかすかな光は、ちょうど通り過ぎた飛行機の灯りです。
何年振りかのホタルでしたので、
三人とも心にポッと灯りがともったようないい気分で
帰り道の口も滑らかでした。