年末に下田へ行ってきた。年の終わりに骨休めに温泉にでも浸かろうかというだけのことだった。と言っても泊まるところにあてがあったわけではないので、結局ネットで安いお宿を見つけた。決め手は、金目鯛の煮つけが夕飯に出るということだけ。
崎陽軒のシュウマイ弁当を買って踊り子号に乗り込む。列車の右側はガラガラ、左側だけにお客が集まっている。それもそのはず伊豆へ向かう時、左側だけ海が見えるからだ。窓から伊豆の島々が見える。初島だ、大島だなんて言っているうちにあっけなく下田へ着いてしまった。 伊豆半島は温かく寒暖の差がないので紅葉狩りの話はあまり聞かないけれども、まだ赤や黄色に色づいた山々を見られるおまけ付きだった。
旧澤村邸(ギャラリー、休憩所)
以前に一度下田へは来ているが、旅行社のお膳立てしかもグループ旅行だったのでほとんど記憶に残っていない。着いた日は、雨こそ降らなかったけれども曇り空。駅から地図を見ながら古いナマコ塀のある町屋の残る通りを歩き、日米和親条約を結んだ了仙寺や、ペリーロードと呼ばれる川に沿った界隈を歩き、早めにお迎えバスに乗って宿へ向かった。
ペリーロードの風情のある家(骨董屋)
1階の八畳の部屋(部屋タイプはお任せ)ということだったのでどんな部屋かなと思っていたところ、3階の十畳の部屋にグレードアップされていた。この日は夕日こそ見えなかったけれども、窓からは海がよく見えた。食べきれない数の料理の数々、それにゆっくりと浸かれた温泉と満足の一日目が過ぎた。
宿の玄関先から見えた浜
翌日は天気が良さそうなので、爪木崎へ行こうということになった。駅から、爪木崎行のバスが出ていた。途中須崎という地名を見て確かここにも天皇家の御用邸があることに気がついた。30分くらいだっただろうか。爪木崎のバス停に到着。バスを降りてちょっと歩くだけで水仙の甘い香りが上ってくる。日本水仙は、派手さはないが香りは上品で私は大好きだ。
12月20日から水仙まつりということで咲いていることはわかっていたが、すでに斜面を白く染めていた。5分咲きというところか。やっぱりここも暖冬なのか春が早いようだ。左に寄ったところにうっすら立っているのが灯台である。やっぱりここまで来たら灯台の真下まで行こうと右側の山道を歩いて行った。
やぶ椿が咲く林のところどころに展望台がある。右方向が須崎。ハイキングができるような道が続いている。三浦半島の岩礁の道を思い出し、今度来た時は歩いてみたいものだと思った。青い海を背景にツワブキの黄色が鮮やかだ。
爪木崎灯台が近づいてきた。右側にうっすら見えているのは新島だそうだ。伊東からずっと島が見えていて、伊豆七島は割合近いことを知った。
爪木崎灯台の真下へ到着。昔は灯台守のことが歌になるくらいだったが、今は、ほとんどの灯台は、無人なのだろう。ここからまた元来た道を戻りながら、西側に岩が広がる浜へ下りてみた。
この辺りの海岸には、柱状節理と呼ばれる岩石が隆起している。火山の爆発でできた地層にマグマが入り込み収縮してこのような不思議な形になったのだという。爪木崎の柱状節理は、この辺りでは「俵磯」(たわらいそ)と呼ばれているそうだ。
上から見ると柱の頭のところは、鉛筆のようにきれいに六角形になっている。本当に不思議な形の岩たちだ。これだけでなく伊豆半島には火山によってできた不思議な地形がたくさんあると聞いたので、機会を見つけて歩いてみたいと思うのだがもう無理かもしれない。
茅ヶ崎に行くようになってから、浜や磯を歩くと見過ごせないのがそこここに生えている植物たちだ。左上から、ハマヒルガオ、ハマアザミ、ソナレムグラ、アシタバ、ボタンボウフウ。最後のボタンボウフウは、長命草とも言われ、この頃ではわざわざ栽培して美と健康のために粉末や粒に加工され商品として高く売られているということも近頃知った。
崖を覆う日本水仙の群落。この水仙の故郷は、地中海沿岸らしいが日本には中国を経由して入ってきたと言われている。ここにも海流に乗って流れ着いた球根が根付いたのかもしれない。
爪木崎のほかにも日本水仙の群落は、福井県の越前岬にあると聞いているが日本海の方は、寒さが厳しそうなのでもっと凛とした香りの花が咲くような気がする。
浜の方へ下りるとアロエがこれも花盛り。鶏の首のところを連想してしまうのであまり好きな花ではないが、青い海との対比は鮮烈だ。
地元の干物、干し柿、天草。水仙の花などを売る青空市が開かれていたが、お店の人は、「こんな風のない日は珍しいんだよ。ここは天気がよくっても風が強い日は寒いからね。いい日に来たねえ。」と言っていた。この日も曇りの予想だったので、私たちは運がいいということになる。湘南も三浦半島も冬は、西風が強く吹くという話を聞いているので、伊豆半島も同じなんだなと思った。
最後に この日のお昼に食べた「金目鯛あぶり棒寿司」。下田は、金目鯛の水揚げが日本一なので、キンメはどうしても食べたいと思っていた。魚市場近くの回転ずし「魚どんや」で食べた。地魚のお寿司もいくつか食べたが、この「キンメのあぶり棒寿司」がピカイチだった。タレのついた皮は香ばしくパリッと焼けていて身は脂がとろっとしていて美味しいですよ。
今年もどうぞよろしくお願いします。