「ハナネコノメ」を訪ねて(裏高尾) 

ハナネコノメソウ

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 昨年からの懸案だった花を探しに裏高尾まで足を延ばしました。見たいと思っていた花がこのハナネコノメソウです。湿った川の縁に群生する花ですが、友人に教えてもらった日影沢には見当たりませんでした。昨年の19号台風で沢には大きな岩が上流から転がり倒木が流れを塞いでいるところもありました。群落があったところは、水で流され跡形もなくなっていたのです。

 

 ところが、高尾発10時12分のバスに乗り合わせた女性がとても親切な方で道を尋ねると植物を見つけながら歩いて下さったのです。日影沢からいろはの森を経て高尾山の頂上へ行こうとしていたのですが、道をまちがえてしまったのでキャンプ場まで戻って、ついでに昼ご飯を食べることにしました。

 

 そこへまた一人で見えた83才とおっしゃる女性が来て、隣のベンチでお弁当を食べ始めました。地元に住んでいらっしゃる方で、時間があると気ままに歩いているのだということでした。雨上がりの朝は沢へ来ると野鳥がたくさん集まっているのでそれを見によく来るのだそうです。膝の半月板を痛めて今はあまり高い山には登っていらっしゃらないようですが、以前は穂高や蝶が岳などへ行っていたというのでびっくりです。今も上高地が好きで松本に泊まり、朝一のバスで日帰りで行ってくるのだとおっしゃっていました。

 

 その方が先に登って行かれた後、二人でいろんな花を愛でながら、お目当てのハナネコノメを求め、結局蛇滝口まで下って滝への道を上って行きました。滝のある小屋のちょっと手前の道に「あれが、ハナネコノメだよ。」というので近づくと、ありました、ありました、ハナネコノメが。

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 早春の妖精は、薄暗い日陰にひっそりと咲いていました。葉も花も3ミリから5ミリくらいの大きさで知った人でないと遠くからでは見つけることはできなかったと思いました。

 白いのはガクで、4枚、その中に赤く伸びているのが葯の袋を被った雄しべ、背の高いのが4本と、短いのが4本。何で2段階に分かれているのかと思いました。たぶん高い雄しべに異変が生じた時に低い方がカバーするように危機管理がプログラムされているのかなと想像しました。生き物に備わっている生命のしくみというのはものすごいなと一人感心してしまいました。

ヤマネコノメソウ

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ヨゴレネコノメソウ

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 ネコノメソウには、ヤマネコノメソウ、ヨゴレネコノメソウなどたくさんの仲間がいて、小さくて目立たない花なのに好きな人が結構いるのです。中でもハナネコノメソウは、白と赤のコントラストが鮮やかで、野草好きの心をつかんで離しません。春をいち早く告げる小さな小さな妖精のような気がします。

 

 いろんな植物の知識がある方がご一緒して下さったので見つけることができましたが、たぶん一人では今回見つけることができなかったかもしれません。そのご婦人は、元ワンゲル部で丹沢にも北アルプスにも昨夏私も上った森吉山にも秋田駒ヶ岳にも登っていらっしゃったので、お話も合い楽しい時間を過ごせました。私よりも3つ年上の方でしたが私と同じで一人で出かけることが多いそうです。今回は、私のために心を砕いて下さり本当にありがたかったです。

 

電話番号もメールのアドレスも聞くことなく、またこの辺りで逢えることを期待しつつ、お別れしました。

 

コロナウイルスの流行で気持ちが重い毎日ですが、人が少ない山で春の妖精を探すのは空気もすがすがしく、気持ちも軽快になります。皆さんも人があまり訪れない自然がいっぱいある場所に行かれてはどうでしょうか。因みにあんなに混んでいるといわれた高尾山ですが、裏高尾は梅が満開、表高尾も人通りが少なかったですよ。ただし花粉症の方にはお勧めしない方がいいですね。スギ花粉がたくさん飛んでましたから。