先々週の日曜日、実家の草取りに出かけてひと段落した後近くの「子ども植物園」に出かけた。
鳥に出会うのはその瞬間そこに居合わせないとならないが、植物との出会いも幾分時間はあるとはいえまた同じ。確かに植物は自分で移動することはないが、花の時期は短く儚い。一週間後なんて思っていると花弁がなかったりする。
ここ数年3月4月は忙しくて行けていなかったのか、この日はずいぶんといろんな植物の開花に出会え幸せな時間が過ごせた。
シャクナゲ ヨコハマ
何本かシャクナゲが咲いているが、ヨコハマと名付けられたシャクナゲはこれだけ。
たぶん在来の物ではなく園芸種として改良されたものだろう。ピンクの愛らしい小花が丸く付いている。
桜の花びらが川面に浮かんで流れていく様もハナイカダと呼ぶが、この植物の名前だ。ここにあるのは知っていたが、葉っぱの真ん中に花が付いているのを見つけることは今までなかった。
仙台の高校に通っていた頃、門を入った玄関の植栽の中にこのハナイカダがあった。大きなイカダに船頭さんのように花が付いている姿が想像できてすぐに名前を覚えた懐かしい花でもある。
ナギイカダ
これも葉の中に突然花が付く。実が付いたところを見たことがあっても花が咲いているのを見たのは初めてだ。こちらは、棘があるので、動物の出入りを防ぐために生垣に利用されたりする。葉っぱのように見えるのは、実は茎なのだそうだ。よく見るとかわいい花だ。
ムサシアブミ
マムシグサ、ウラシマソウは、目にしたことがあるが、このムサシアブミはまだ見たことがなかった。ストライプ模様のベレー帽を被ったモダンボーイだ。どこに行けば見られるのかと調べていたばかりだったので、まさかこの植物園に生えているとは思わず、すごく嬉しかった。
サトイモ科テンナンショウ属の仲間をこれで三つ見つけたことになる。武藏の国の上質な鐙という名誉な名前をもらったのだ。その昔、馬具は関東の物が質がよかったのだそうである。
ホウチャクソウ、ナルコユリ、アマドコロと似たような花の一つだ。山へ行くと割合どこにでも生えていそうだが、今開かんとしている姿に魅せられて写真を撮ってみた。
ホウチャクは、漢字で書くと「宝鐸」。お寺の屋根の四隅につりさげられた鐘に由来するそうだ。ムサシアブミもホウチャクソウも植物の名前を調べることから、逆に歴史や文化的なことを知ることができて得をした気分になる。
3年前に奥多摩で初めて見た花だ。この辺りに咲いているという表示がしてあったのに、柵をしてあるところから離れていてなかなか見つけられなかった。雑木林の枯れ葉の中から目立たないように生えているので目が慣れないとなかなか見つけられない。この日は曇っていたので、花弁は閉じていたからなおさらだ。私にとっては、3年前からスプリング エフェメラル(春の妖精)の一つである。
ウコン
八重桜の仲間ではじめは黄緑色に近い薄い黄色の花をつける。もう少し緑が強いのはギョイコウという種類だ。遠くから、うす緑に見えていたのが、だんだんと花の芯から赤くなって最後はピンクのサクラに変化していく。こうなるともう間もなく花が散り始め、春の終わりを告げる。
シベリアから10月ごろ群れになって日本にやってくる渡り鳥なのに、この辺りでは群れになっているのを一度も見たことがない。この日もたった一羽でこの草原にたたずんでいた。いつものように背筋を伸ばしたいい姿勢で。
ツグミは鳴かない。少なくとも私は聞いたことがない。繁殖活動がないからだというが、見返りツグミを見ていると、ツグミにも後ろ髪引かれるものがあるような気がしてくる。そろそろ北の国へ帰らなくてはならない。
木の枝に停まってもいい姿勢で西を向いている。これから帰って行く方向でも確かめているのだろうか。
たくさんエサを食べてエネルギーのチャージも終わったようだ。おいしそうだと猛禽類に狙われないように気を付けて。
仲間の待ち合わせ場所はわかっているのだろうか。気をつけてシベリアまで飛んでいくんだよ。来年の秋にまたここで会えるといいねえ。
ツグミが旅立つと春も終わり。