丘の上の本屋さん (イタリアユニセフとの共同作品)

 昨日「丘の上の本屋さん」を観に行ってきた。

 私としては久しぶりの劇映画だ。

 

 見晴らしのいい丘に建つ古本屋さんの主人「リベロ」とお客さんとの交流

が描かれた大変シンプルな映画。

 

 広場には古本屋とカフェが並んで立っている。

 丘の上からは、小高い山並み、少し紅葉した木々、刈り取られていく作物畑、ほかに

は何もないけれど、素晴らしい景色だ。

 

 古本屋の入口に出してある木箱に本が入っている。

 ある日一人の少年がやって来て本を覗いているのを見て、リベロが声をかける。

 「漫画は好きか?」と尋ねると

「好きだけれど買うことはできない。」と答える。

 

 リベロは、「読み終わったら、返してくれればいいから。」と

その少年に1冊の本を貸し与える。

 

 少年の名は、「エシエン」、「6年前にブルキナファソから来た。」

と、自己紹介する。この時エシエンが選んだ本は、「ミッキーマウス」。

ブルキナファソは、アフリカのサハラ砂漠の南側にある世界でも最貧国の一つだそう

だ。)

 

 

 次の日も、その次の日も、借りては返す。

 リベロは、本をこよなく愛する老人。好奇心の強い利発な少年に本を選び

その本についての感想を聞くことが彼の楽しみになっていく。

 

 漫画を卒業して初めての読み物は、何だろうと思っていたところ、

最初に選んだのは、「ピノキオの冒険」だった。

 次々にリベロが選んで渡す本に興味がそそられた。

 

 店には、隣のカフェの青年、元大学教授、家政婦の女性、ごみ箱からめぼしい

古本を拾ってきては売りつける移民労働者などいろんな人がやってくる。

 彼らとの会話のやり取りも見逃せない。

 最後の方に「なぞなぞ好きの男」として登場してくるのは、この映画の監督脚本の

「クラウディオ・ロッシ・マッシミ」。

 時々映画に登場するらしい。

 

 リベロとは、イタリアの言葉で、自由を意味する。

 古書店の「発禁の棚」には「チャタレイ夫人の恋人」などが表紙を前に向けて

並べられている。

 その本たちは、多くの人に見てもらいたいだけで売ることはしない。

 本は、自由でなければならないというリベロの信念が貫かれている。

 

 リベロは机の上に置いてあるオルゴールを時々鳴らす。

 映画の筋には直接関係はないのだが、この音がリベロの人柄を表しているようで

このせわしい世の中の動きとは正反対の緩やかな空気を感じた。

 

 舞台となった場所は、イタリアの中部「最も美しい村」の一つである

「チヴィテッラ・デル・トロント」。イタリアは、なぜか心惹かれる。

 

 最後に古書店をめぐる時に思い出してほしいことばがあったのでご紹介

 

  持ち主が代わり、新たな視線に触れるたび、本は力を得る。

          カルロス・ルイス・サフォン「風の影」(2001)

(ジャックアンドベティで21日まで上映予定)