アッバス・キアロスタミが日本で作った映画

ライク・サムワン・イン・ラブ

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 キアロスタミ監督が日本を舞台にして日本人の俳優を使って作った映画です。

 彼の映画と出会ったのは、もう十数年前だと思いますが、「友だちのうちは、どこ?」という映画を見たのが最初でした。イランでは、宗教的なこともあるだろうし、映画を撮る人には、制約があって大変なはずなのに、「友だちのうちは、どこ?」は、とにかく新鮮で面白かった印象が残っています。

 学校で宿題をやってこなかった席の隣の友だちが先生に叱られたのに、うちへ帰ったら、その子のノートを持って帰って来てしまったことに気づき、また先生に叱られたら大変だと、家をよく知らない友だちの村までノートを届けに行くというだけの話なのに、一緒にはらはらどきどきしたのです。

  あらすじ:80歳を超え、現役を引退した元大学教授のタカシは、亡妻にも似た1人の若い女性明子をデートクラブを通して家に呼ぶ。タカシは、ダイニングテーブルに桜海老のスープとワインを用意し、楽しい時を過ごそうとしてるが、明子は、田舎から出てきた祖母を迎えに行かなかったことを気にしている。翌朝、明子が通う大学へ車で送ったタカシの前に、彼女の婚約者だというノリアキという青年が現れる。ノリアキは、タカシを明子の祖父と勘違いするところから、運命の歯車が廻りだす。

 老いのロマンティシズムともいえる愛への執着を見せるタカシ、場面ごとに表情や態度を変えていく女子大生の明子、彼女の恋人だが、明子をストーカー的に拘束することが愛だと思っているノリアキ、それぞれの「一方的な愛」「うそ、ほんと」をめぐるドラマが、一日にも満たない時間の中で繰り広げられます。それこそ、始まりもなく終わりもなく・・・・Like someone in love というジャズの歌が流れてこの映画は、終わっていきます。

 この映画の中でも、携帯電話がよく使われます。留守電の声、アリバイを証明するための電話、それに、実際に目の前にいる人と話をする時にも、相手の目を見ないで話をしている場面が多くあります。たぶん、ある意味現代を意図的に切り取っているのだろうと思いました。

  「友だちのうちはどこ?」と比べて、同じ日常を切り取っている映画にも関わらず、筋立てがはっきりとしているわけでもないので、心を躍らせる映画とは言えません。ちょっと試験的な映画かもしれません。