初夏の浜中町の旅 その7

 2日目の夕食

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 この日は、たっぷり刺身丼と肉厚の昆布と豚肉の煮物。

 鮭とイクラとホッキとオヒョウ(白身)と聞いたつもりだが、うろ覚え

 昆布で出汁をよく取るが、たまにおでんに入れるくらいで昆布はあまり好きな食材ではなかった。だが、この日食べた昆布の美味しさには驚かされた。肉厚なのに柔らかく噛むとほろっとする。豚肉は、去年まで飼っていた豚の肉を冷凍保存していたものだそうで、全然肉の臭みがなく、柔らかい。これも驚き。昆布と肉のうま味が絡んでいる。

 この日を境に持ち帰った刻んだ昆布や早煮え昆布を使って、いろんな料理に挑戦している。繊維質も多くてお腹の調子も整えてくれる。

 

 この宿の主は、去年まで豚や鶏も自分のうちで飼っていたのだそうだ。今年は、畑仕事だけにしているようだが、それも有機栽培にこだわり、その野菜が宿の朝食にも出てきた。(気温が低いので、まだあまり大きく成長していない)

 発酵食にこだわっているので、味噌も自家製、ヨーグルトも自家製。家に住みつく常在菌を殺さないように育てているそうだ。

 

 したがって、コロナ禍でも玄関を入る時には特別なスプレーがあってそれを使ってアルコール消毒はしないように言われ、排水も菌が分解するので備え付けの石鹸やシャンプー以外の物を使わない約束になっている。アルコール消毒をしないといられない人は不向きだとホームページにも書かれている。私は、逆に興味津津でこの宿を選んだ。

 

 北海道の民宿のあれこれや様々な話を夕飯後にほかのお客さんたちと一緒にする。どこか昔のユースホステルのようだ。

 今は、コロナ禍でお客さんは少ないが宿主は「五人娘」という名のお酒を飲みながら実に楽し気に話をする。私は、呑めないが話を聞くのは楽しくてうまく混ぜてもらう。

 

 映画でも有名になったリンゴ栽培の木村さんが開いている農の学校へ宿主が参加している話も聞かせてくれた。今年は、拠点になっている余市でブドウの栽培に取り組んでいるとのこと。民宿の仕事が閑な時に遙々通っているのだそうだ。

 私の友人が去年挑戦してうまくいかなかったと言っていた「不耕起栽培」の話は、特に興味深かった。表面から20cmと50cmのところが同じ温度になるように、麦を植えて根を延ばし、その横に大豆を蒔き、そして植えたい作物を蒔くという方法まで教えてくれた。

 

 そして化学肥料の話。食糧増産と言いながら、世界中で化学肥料を使ってきたが、その窒素肥料の半分は、空気中に出てしまい、わずかだけが使われるという話も興味深かった。使われない窒素が環境破壊を引き起こし、地球温暖化を進める大きな原因にもなっているという話は衝撃的だった。

 SDGsが言われて久しくなるが、なぜそんな恐ろしいことが世間に流布しないのか不思議だが、儲け話に踊らされている世の中には浸透しないのだろう。今さえ良ければは、どこにもはびこっている。

 

 こんな難しい話だけでなく、サッポロビールが出している「クラシック」という銘柄は、道内だけの出荷で本州にはないのだとか。帰ってから探してみたが、それは本当だった。

 コンビニがこの町に3軒あるらしいが、いずれも「セイコーマート」。セブンイレブンやローソンやファミリーマートはないとか。少なくとも神奈川県にはない。

 そうこうしているうちに夜も更け、二時間はあっという間に過ぎていく。

 

 

 (つづく)