北海道の旅 その6 白老

白老駅

 午後1時半ごろ白老駅に到着。

 ウポポイができたので、駅も新しくしたのではないかと思うほど美しく整っている。

 駅のロータリーの向こうには大きな木が立っている。

 何の木かと近くに寄ってみると、「タモ」の木だと分かった。すぐそばに歌碑が立っ

ていて、「白老はわが故郷よ 驛を出て先づ眼にしたるタモの大木」という歌が刻まれ

ている。明治生まれの満岡照子さんという歌人の作品である。存命中に大木だったとい

うことなので、このタモはずいぶんと長く駅を降りる人を迎えてきたのだろう。

 駅の横にポストがある。これもウポポイ仕様の特別製のものだ。

 「イランカラㇷ゚テ」の意味は、いわゆる「こんにちは」の丁寧な言葉だという。

ウポポイへ入ると、あちらこちらでこの言葉を耳にするので、覚えることができた。

 この言葉には「あなたの心にそっと触れさせていただきます。」という解釈もあ

るという。この解釈の方がアイヌの人の心を表しているような気がする。

 

 駅前の通りをまっすぐ歩いて行くと海である。宿は右へ曲がって5分ほどのところに

あった。チェックインには時間が早かったけれど、フロントで聞くとチェックインがで

きるとのことだったので、荷物を置いてウポポイへ出かけることにした。

ウポポイの入口

 宿から駅の反対側を15分くらい歩くと到着。

 入口で今日の入場の予約を取っていたので、手続きをして中へ入った。

 「ウポポイ」とは、「民族共生象徴l空間」となんだかとても難しいことばとしてあら

わされている。先住民と後から入ってきた民族とは一言で折り合えないセンシティブな

内容があるからなのではないかと想像した。

ポロト湖

 入口を入ると目の前に「ポロト湖」がある。後で聞いた話であるが、この湖は本当は

川が膨らんでできているだけなのだとか。このポロト湖に沿っていろんな建物が作ら

れているので、とても開放的で気持ちがよい。

 森の上に見える山は、「樽前山」ドームを持った火山で今も活動中の活火山だ。

約1000mの高さで、苫小牧から登ることができる。

ウエカリチセ 体験交流ホール

 限られたプログラムの中に伝統芸能上演がこのホールであった。写真が撮れないとい

うので、始まる前に係の人に断って舞台の写真を撮らせてもらった。 

 日替わりで各地域のアイヌ伝統芸能保存会の人たちがここで歌や演奏、舞踊を披露

してくれる。私が行った日は、浦河の伝統芸能だった。印象的なのは、上着の裾を手で

持ち上げ鶴を表した舞だった。

 演ずる方々は、年配者が多く、若い人が少ない。後継者を育てていくのは、アイヌ

人たちにとっても大きな課題なんだろうなと思いながら見させてもらった。

 この日の夕方の時間に予約をしていた都合上、博物館に回った。イコㇿウエカリレ

国立アイヌ民族博物館は大きくて立派な建物だ。

 この中でクマのことが気になった。イヨマンテの日にクマの魂が送り返され、肉や毛

皮などは置いていく。クマは、カムイになって神の国へ帰っていく。

 神の国へ帰るときに持っていくお土産だ。木の実、モチ、酒、イナウ(木を削った飾

り)などを持ち帰り、ほかのカムイたちと一緒に宴会を催し、アイヌモシリ(人間世

界)のようすをみんなに伝えるのだそうである。

 西の空は、赤く染まり夕闇が迫ってきた。午後七時にウエカリチセ(体験交流ホー

ル)の建物の外壁でプロジェクションマッピングが上映された。(土日のみのプログラ 

ム)

 この日は、中秋の名月。博物館の屋根の上に満月が出ていた。北海道でお月見ができ

るとは思っていなかったので、初めての経験でちょっと感激だ。

 夜になると冷え冷えとする。上着を着て月と一緒に夜道を宿へと向かった。

(つづく)