新庄経由で帰途につく

 鳴子で一番の紅葉の名所「中山平駅」を過ぎると、次の駅は「堺田駅」。何気なく外

を見ていたら「分水嶺」という表示が見えた。

 左が日本海、右が太平洋となっている。駅のすぐそばにこんな分水嶺の表示があるの

は珍しい。中山平からこの堺田あたりが峠の一番高いところなのだろう。列車は、徐々

に下っていく。10年ほど前に一度通ったのだけれども二人でしゃべっていたので、きっ

とそんなことには気づくこともなく通り過ぎたのか、今回初めて知った。

 

 東北を東西に分ける巨大な屋台骨奥羽山脈を越えたのだと思うとすごいことを達成し

たような気分になる。自分の脚でここを越えた人たちは、(例えば松尾芭蕉など)さぞ

や大変だったことだろう。

 

 ここからは列車も滑るように西へと下っていく。赤倉温泉瀬見温泉と二つ温泉の名

前が付く駅があった。スキーでもやらないとなかなかこちらの温泉まで来ることはない

ような気がするが、奥羽山脈には本当にたくさんの温泉があるのだ。

 

 だんだん田んぼや畑、工場や宅地が多くなり平らな土地が広がってきたと思ったら、

終着駅新庄だ。

 新庄駅舎はピカピカで真新しいのでびっくりした。ここは山形新幹線の始発駅でもあ

るせいだろうか。2時間ばかり乗り継ぎ時間があったので、駅から歩いて行ける城跡ま

で行ってみた。

 戊辰戦争まで長い間戸沢氏が治めていた城があったのだそうだが、街ごと焼けてしま

い今は、最上公園という名で、この地域の人たちに親しまれているという。

 この神社は、戸沢神社という名で戸沢家の始祖を祀っているのだそうだ。

 もみじが紅葉して美しかった。そばに池があってカモが泳いでいた。渡りのカモかと

思ったが、カルガモでなあんだという感じだった。

 城跡の遺構は、この石垣のみ。石垣の下にある堀とこの二つが江戸期、ここがお城で

あったことを証明してくれる。

 この一帯は、公園になっているので、博物館もあったが、ゆっくりと見たりできない

し少々疲れもあってスルーして駅への道を辿った。

 

 駅までの道は、新庄のメインストリートのようだが、水曜日のせいもあるのか、シャ

ッターが閉まっていたり、お休みのお店があったりで、どうも活気がない。

 新幹線始発の駅ですらこの感じだから、ローカル線の駅は推して知るべし。陸羽西線

を使って酒田市を訪ねた時も、メインストリートのシャッターは固く閉まっていたし、

日本は大きな人口を抱えている地域しか将来を展望できない。冬になれば深い雪に閉ざ

され、もっと生活が大変になるのだろう。

 駅までの道々そんなことを考えながら歩いた。

 初めて乗る山形新幹線つばさ号」。疲れていたので山形辺りまでは目を開けて車窓

の眺めを楽しんでいたが、そのうち眠ってしまった。新幹線といっても停まる駅の数が

多いなという印象を持った。

 

 新庄で食べそこなったお昼だったので、駅で「上京弁当」という名のついたお弁当を

買って列車の中で食べた。お米は、つや姫(山形産の美味しいお米)サクランボ鶏の味

噌カツと串焼き、それにいも煮の牛肉巻、野菜の煮物などこの地方の名物を詰め込んだ

お弁当だ。「いづでもかえってこいな。」という母のセリフを入れたところが、集団就

職の頃を思い出して、ノスタルジックになる。ウイークデーには、5個くらいしか作ら

ないお弁当だというので、買えたのはラッキーだったのかもしれない。

 

 これでこの旅のブログは終わりです。一緒に旅をしてくださりありがとうございま

す。