ムクウェゲ「女性にとって世界最悪の場所」で闘う医師

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 映画のことを書いたついでに6月の初めに名画座で見た映画を紹介したい。

 

 2018年にノーベル平和賞をもらった婦人科医「デニ・ムクウェゲ」を追ったドキ

ュメンタリーだ。ノーベル賞をもらった方なのに、恥ずかしいことに私の頭の中には刻

まれていなかった。 私が気になったのは、「女性にとって世界最悪の場所」というフ

レーズだった。

 

 場所は、コンゴ共和国東部。彼は、性暴力を受けて肉体的にも精神的にも傷ついて彼

の病院へ運ばれてきた女性を20年以上に渡り、無償で治療にあたってきたそうだ。

 

 なんでその地域が性暴力の温床の地になるのかが明かされる。

 この地域は、錫やレアメタルなどの鉱物資源が豊富な生産地なのである。

 その鉱物資源をめぐる利権争いをめぐって、常に争いが繰り返されている。

 

 利権を確保するために、その地域に住む人たちに組織的な性暴力を使って恐怖心を与

えるのが目的なため、中には内臓までも傷つけられるひどいけがをする女性もいるとい

う。

 

 その数は、年間2500人から3000人。治療しても治療しても後を絶たないこの

暴力を世界の人に知らせなければと彼は、あらゆる機会をとらえ講演を行い知らせてき

たそうだ。

 

 レアメタルは、今や誰もが持っているスマホに使われている。世界がレアメタルをめ

ぐって争奪戦を作り拡げているわけで、その利権は計り知れない。

 5Gだなんだと無邪気に新しい機種を買うときに、地球の反対側で罪のない女性がそ

の鉱物資源をめぐって生きることを脅かされていることに思いを巡らせることはあるだ

ろうか。

 

 いずれ資源も枯渇する。今あるものの再利用を真剣に考えていかなくてはいけない岐

路に立っているのだ。

 便利の裏側に隠れているもの、そこまで目を向けないと平和で安全な生活までも脅か

されていくことを改めて考えさせられる映画だった。

 

 ムクウェゲさんも命を狙われ、一時避難したことがあるが、今は病院の敷地に住まい

を移し、命をかけた活動を続けている。

 

 この映画の監督は、立山芽衣子さん、日本の女性監督だということもお知らせした

い。